価値観の変化に自分はついていけるのか問題

森氏発言問題について思うところを書いてみます。

 

オリンピック組織委員会代表の森氏が女性蔑視発言で辞任しました。発言の内容自体については色んな人が色んなことを言っているので、私は特に何も言いません。

 

私が考えたのは、「長く生き、その間に世間の価値観が変わることに自分がついていけるのか」です。

 

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森氏は83歳。人が生まれてからアイデンティティーを獲得するのが20歳前後だとすると、約60年前です。今から60年前というと1960年頃。東京タワーができたり、カラーテレビの放送が始まった頃。アメリカでは白人と黒人の乗るバスが分けられていた頃。

 

内閣府男女共同参画局HPによると(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html1960年度の時点では,女子の高等教育機関への進学率は,大学,短期大学ともに5%だったそうです。「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という価値観に賛成する男女が80%以上いた時代が1960年代です(男女雇用機会均等法はさらに先の1986年施行)。

 

森氏の発言を擁護するつもりは全くありませんが、森氏の発言は1960年代を生きた人に生まれやすい発想だったのでは、なんて思います。

 

 

私はこういうジェネレーションギャップに触れた時、「今」の価値観だけをみて、相手を叩く気にはなれません。あぁ、この人が生きてきた時代はこうだったんだな、と思い、この人は「今」という時代についていっていないのだな、と思うだけです。

 

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子育てや女性の地位向上、働き方などで日本より進んでいると言われる北欧。どうしてそうなったかというと、古い価値観を持った年代がこの世を去り、新しい価値観を持った次の世代が世の中を回し始めたからだと、社会学者の古市氏が寄稿しているのを読みました。パラダイムシフトは世代交代によって起こったのだと。だとすると北欧だって2030年ぐらいかけて新しい価値観に変わっていったわけです。

 

それが現代はSNSの普及などにより、一般人の声が世に伝わりやすくなって、時代の変わるスピードがさらに速くなっているな、というのを感じます。SNSがなければ今回の森氏の発言も「わきまえる」周囲の人たちによってなだめられ、森氏はオリンピックの会長職を全うし、そのまま政治家人生を終えていたと思います。まさか、一般人の意見で自分が辞任に追い込まれるとは思っていなかったと思います。

 

より良い世の中になるのですから、良いに決まっているのですが、私はふと怖くなることがあります。それが冒頭の「世間の価値観が変わることに自分がついていけるのか」です。

 

 

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例えば、私が80歳になった頃、

 

「え、仕事と子育ての両立?子どもを親が育てるなんてナンセンス。生まれた直後から国の育児機関に引き渡して教育を受けさせるのが当たり前」

 

「え、男と結婚?男なんて下等な生き物いらないでしょう。人工受精卵が簡単に作れるようになった今、労働力以外に使い道ないよ」

 

「え、子どもを自分で産むの?女性が出産・育児で職場を離れることは非効率でしょう。女性ロボットで人工出産を行なうのが当たり前よ」

 

なんて価値観が当たり前になっていて、私が例えば「子どもは両親が愛情を持って育てたほうがいい」なんて言ったら「おばあちゃん、その考え方は時代遅れなんだよ」って言われてしまうのかしら。

 

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仕事で地方の農家さんに行った時、7080代のおばあちゃんが、出産給付金のニュースを見て「国からお金をもらって子どもを育てるなんてねぇ。今の若い世代は甘いねぇ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

 

その言葉にどうこう思うよりも、「長く生きるのも辛いな。自分にパラダイムシフトは乗り越えられるのかな」と思ってしまうのです。皆さんはどうですか。

 

#森氏 #女性蔑視 #パラダイムシフト